サカナクション

 陽が落ち闇に包まれはじめた稲佐山に、遂にクライマックスの時が訪れた。待望の初登場にしてトリを飾るのは、サカナクション。

 暗転から一気にブルーに染まったステージに浮かび上がるようにメンバーが登場すると、歓声と拍手が入り混じった熱い風が会場中から舞い上がった。
「僕たち私たち、サカナクションです!」
 音と光が交錯する華々しいオープニングから『新宝島』へ、美しい音響とメロディーの拡がり、言葉の連なり、そしてその全てを映し出すように織り成される光の演出は圧倒的で、言葉はもちろん思考を挟む余地もない。ただただ、我を忘れてそれに身を任せるしかない。壮大なサウンドスケープはどこまでも拡がっていき、オーディエンスは皆、恍惚と踊るしかないのだ。サビへ向かい一心に逸るような『アルクアラウンド』ですでに会場中が一体となっている。 「スカイジャンボリーサイコウ! みんな、まだまだ踊れる?」
山口一郎がそう呼びかけ、『三日月サンセット』からはじまった中盤は、もはや宙(そら)を泳いでいる感覚。「長崎の皆さんは自由に自分のステップで踊れますか!?」と、軽やかにステップを踏み踊る山口に先導され、音を可視化していくライティングのなかでオーディエンスの表情が煌めき、身体が解放され躍動していく。

 この中盤途中、『SORATO』の時だったか、ステージ後方に見える3本の鉄塔が、まるでリズムに乗って踊るように色を変えるという光景があった。DJマーク氏によると「あれは“平和を願う祈りのイルミネーションショー”という演出です。8月9日にちなんで、毎日8時9分に行われています」とのことだったが、サカナクションが仕掛けた演出の一部だと思った方も多かったようだ。それくらい、景色ごとどころか空間ごとを、彼らはその音の舞台にしていた。 『ミュージック』では重なり拡がっていくハーモニーと共に、オーロラのごとくグリーンの光彩が形を変えながら天空を染めていく。そして、エレクトロの訴求力と中毒性、ダンスロックの昂揚感と肉体性を大爆発させたのが『アイデンティティ』。その神秘的なまでに美しく盛大なパフォーマンスに応え、10000人のオーディエンス一同が起こしたアクションも壮大で、山口も「すごい景色!」と感嘆の声を上げるほど。そのままラストの『多分、風』で最高潮へ。現から完全に離脱させるトリップ感に、感動と歓喜の嵐が巻き起こったのは言うまでもない。
「今日はありがとうございました!また必ず帰ってきます!」ー万感の笑みを湛え一度はステージを去りかけたメンバーだったが、「ギリギリまで色々やりすぎちゃったんで、アンコールはこのまま引っ込まずもう1曲やらせてもらっていいですか?」とそのままアンコールへ。長崎の市街地まで響きそうな大歓声の中で披露されたのは『目が明く藍色』。その音に、歌に導かれオーディエンスが掲げたスマホや携帯から発せられる光が瞬く星となり、最後、稲佐山は天も地もない美しい宇宙空間となっていた。

 野外ステージでなければ映えない演出もあれば、野外だからできない演出もある。制約の中で出来ること+αを模索、構築し、持ち時間を目一杯使って求めた、先進的かつ最高峰のパフォーマンス。徹底的に「魅せる」ことを命題としたサカナクションによってSky Jamboree 2017は素晴らしいフィナーレを迎えた。



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サカナクション
Set List

M1. 新宝島
M2. アルクアラウンド
M3. 三日月サンセット
M4. SORATO
M5. ミュージック
M6. アイデンティティ
M7. 多分、風。

EN1. 目が明く藍色

photograph by Yuki KATSUMURA

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