[Alexandros]

 ステージ後方に並んだ赤色のライティングが、まだ明るい最中でも異様の雰囲気を醸し出している。待ちわびているのは、3年ぶりの出演となる[Alexandros]。快晴の稲佐山のステージに、颯爽、堂々とメンバーが登場するや否や、悲鳴に近いような歓声が上がった。過去2回とも雨に見舞われた彼らの、Sky Jamboree出演3回目にしてついに"晴れ"舞台の開幕である。
 オープニングは爽快なドライブ感に満ちた『ワタリドリ』。冴え冴えしいギターリフに始まるキラー・チューンがオーディエンスの逸る心を一気に捉え沸騰させる。この曲のライヴでの盛り上がりはいつも尋常ではないが、今日はえも言われぬ西陽の斜光と空と相まって、なおさらにファンタスティック。エキサイティングな爆音、開放的なポップネスが身体中を巡っていくようだ。ハンドマイクの川上洋平(Vo.&Gt.)が、モードなホワイトシャツを翻しながら挑発的に、舞うように身体を躍らすその様は、実にフォトジェニック。すでに沸点を超えそうな反響で会場全体がどよめいたまま、アジテイトなイントロが牽引する『Girl A』へ突入すると、美しく魅惑的なサビメロへ向かってさらにオーディエンスは高揚、陶酔していく。ハードなサウンドとハイトーンボイスが絡み合った緊張感あるアンサンブルは、「もっと来いよ!」と言わんばかりのメンバー各々のパフォーマンスにも引っ張られるように、なお扇動的に展開している。さらに、今日もクラッシュシンバルが高い定位置で光る庄村聡泰(Dr.)の不穏なドラミングが響き、ディープゾーンへ引き込む『Kaiju』へ。「ここでしか味わえないものを味わおうぜ!」と川上が焚き付け、ヘヴィなサウンドと闘争的なラップでオーディエンスを煽りまくる。空気を切り裂くような白井眞輝(Gt.)のギターの鋭敏な鳴りに、男性オーディエンスが目を輝かせ耳をそばだたせて狂乱している様も痛快だ。続く『Kick&Spin』では、磯部寛之(Ba.&Cho.)がグイグイと前進的なビートを刻みアグレッシヴなプレイで魅せる。4曲が流麗に、一気呵成にバーストされ、会場の熱狂ぶりはもはや言葉では言い尽くせないほどに高まっているのだが、川上はまだまだ満足できない様子。
「どうしたオマエら、静かじゃないか!?(笑) あらためまして、[Alexandros]です!!」と挑発的に切り出したMCでもひとしきり沸かせたあと、この日のハイライトとも言うべき『Adventure』へと導く。叙情的なイントロからダイナミックなアンサンブルが花開き、メロディアスを極める旋律が空へ昇華されていく。会場全体から湧き起こったシンガロングは美しく、何かにカテゴライズされることを拒み、好奇心の赴くままやりたいことをやりたいように突き進んできたこのバンドの勇姿を讃えるごとく響き渡っていた。
 『ワタリドリ』からこの『Adventure』までの5曲、彼らの激しく美しく洗練されたステージパフォーマンスは、スキがなかった。というか、ほぼ完成されていた。この夏も全国各地でフェス出演を重ねるなかでバンドの地力を上げ、アンサンブルの沸点を高め、ライヴという瞬間への嗅覚をより研ぎ澄ませ、短い時間の中でもバンドの尖鋭性とポピュラリティーを凝縮した完璧なセットリストで、ファンならずともノックアウト。芝生広場の最後尾のオーディエンスまで総立ちにさせる素晴らしい景色を見せてくれた。そして、その締め括りは、これまた彼ららしいのだが、まっさらな新曲で。
「新曲で盛り上がれるオマエらは最高にバカなヤツらだ!愛してるぜーー!長崎!!」
『明日、また』と冠された極上のメッセージを以ての大団円だった。



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[Alexandros]
Set List

M1. ワタリドリ
M2. Girl A
M3. Kaiju
M4. Kick&Spin
mc
M5. Adventure
M6. 明日、また

photograph by Yuki KATSUMURA

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