ストレイテナー

 気温はまだ高いが気持ちのいい風も吹き始めた頃、前半戦最後を締める5組目の登場を迎えた。ここまでの超個性的なアクの強い関西出身4バンドを向こうに、空気を一変させることのできるバンドは彼らしかいないだろう。このフェスと、長崎の街と人とに特別な愛情をもち、'Sky Jamboree Family'として愛されるバンド、ストレイテナーである。

 SEとハンズクラップに誘われるようにゆっくりとステージへ現れた4人。アコースティックギターを抱いたホリエアツシ(Vo.)が1万人ひとりひとりに話しかけるように口を開く。
「東京ずっと雨やったけん、晴れてよかった。帰ってきました。1曲目、長崎の歌から」

柔らかに紡ぎ出されたのは『NO〜命の跡に咲いた花〜』だった。アコギの優しい奏で、リズム隊が鳴らす力強い響き、エレキのエモーショナルな音色、憂いある伸びやかなボーカル−−溶け合い広がるアンサンブルがオーディエンスの心を丸ごと包み込む。その音に身を委ね、澄んだ空に手のひらをかざし、優美な旋律を共に歌うこと、この祈りの曲の描く情景を胸に刻むことは、長崎のオーディエンスにとって最上の歓びであり祈りそのものでもあるのだと思う。そこからグッとアクセルを踏み込むように2曲目『Melodic Storm』へ。ストレートでダイナミックなバンドサウンドに、メロディーの強さ、快さとホリエの求心力の高い歌が立つテナー・スタンダードが、メロディーの昂りと共にオーディエンスの心を昂らせ、身体を躍動させていく。緩急自在のアンサンブルがアグレッシヴに展開し繊細なメロディーラインと絡み合いながら押し上げる『DAY TO DAY』、疾走感と爽快さに満ち溢れるサウンドにグッド・メロディーが畳み掛けられる『シーグラス』と続き、さらにアッパーでストレートかつアジテイトなロック感満載の『From Noon Till Dawn』では、迸るプレイで魅せていたナカヤマシンペイ(Dr.)が弾かれるように立ち上がり身を乗り出すシーンも。ギュッと心を鷲掴むエモーショナルなストーリー展開にオーディエンスの昂りも最高潮を迎えている。昂り極まって、泣かされる−−これはもう一種のカタルシスだろう。

「ストレイテナー始めて来年で20年になります。スカジャンも、来年20年。また帰ってきます!」
 万感の想いを込めてホリエが語り、その想いを音楽で返すべく最後に歌われたのは『ROCKSTEADY』。バンド初期のメロディック極まる名曲に、そして、彼らの永久的な少年性、青さを凝縮しながらも現在のバンドのダイナミクスをもってその大志を際立たせた名演に、瞬く間に昂揚と歓喜の嵐が巻き起こる。曲後半には盟友・細美武士(MONOEYES)がゲストボーカルとして飛び入り参加するサプライズもあり、両者の“Rocksteady”ぶりにも大歓声が上がった。

 全ての演奏を終えたのち、4人はステージ最前に並び肩を組み、実にいい笑顔でオーディエンスの歓声に応えた。この日のためだけの特別なセットリストで彼らが示し共有しようとしたのは《Life goes on.》のメッセージだろう。どんな悲しみや痛みがあろうとも、それでも人生は続いていく。長崎という愛しい街に向け、そこに暮らすそれぞれの人生が豊かであるように、愛しいものであるように、という願いを一心に奏でた彼らの姿は、凛と美しく、頼もしかった。


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ストレイテナー
Set List

M1. NO〜命の跡に咲いた花〜
M2. Melodic Storm
M3. DAY TO DAY
M4. シーグラス
M5. From Noon Till Dawn
M6. ROCKSTEADY

photograph by Yuki KATSUMURA

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