ザ・クロマニヨンズ

 太陽が西に傾き、ギラギラと照りつけた日差しが少しばかり色を変えはじめた頃。ザ・クロマニヨンズが登場。
フェスだろうとライブハウスだろうと一切気合に変化なし。生まれながらのライブバンドである彼らのステージに、稲佐山はまるで数万人規模の巨大フェス会場かと見間違ってしまいそうなほどの盛り上がりを見せた。
  1曲目『クロマニヨン・ストンプ』から激しいロックンロールが鳴り響き、甲本ヒロトがアグレッシヴに身体を動かして全身全霊の歌を聴かせれば、真島昌利のギターは猛々しいまでの音をあげ、小林勝のベースは地鳴りのような重い低音を響かせる。怒涛のリズムを打ち鳴らす桐田勝治のドラムに感覚を奪われ、無我夢中で跳ねるオーディエンスの熱はステージの4人の熱と相まって熱風となって稲佐山を吹き抜けた。 ステージから遠い後方で見ていたって、その熱風の圧倒的な風力に倒されてしまいそうなほどのパワーに満ちたアクトに意識の全てを奪われる。
  続けて鳴り出したのは『ギリギリガガンガン』。空へと昇る歌声は、会場の歌声を連れて強大な音の塊になる。拳をあげて「サイコー!」と歌うヒロトと同じく、会場のそこかしこからあがる「サイコー!」の声。演奏をするステージ上の4人と、対峙する観客が同じ想いになれるライブという最高の場所にいるんだな、と改めて感じてしまう歌だ。空に近く、緑が深く、潮風が吹きこむ場所で、最高の音楽と最高の自然に包まれながアーティストと共に歌う場所。それがSky Jamboreeなんだ。
 『ギリギリガガンガン』で踊りながら「サイコー!」の想いが共有した後は、畳み掛けるビートが『タリホー』の到来を告げる。シンプルなロックンロールに伸びやかなヒロトの歌声が駆ける1曲に観客は大歓声&大合唱。あれだけみんなが躍っていたら、稲佐山の山肌は削れて、数千人の一斉ジャンプでちょっと標高下がっちゃったりして。そんなことを思ってしまうくらいに熱狂的に踊るオーディエンスは、ザ・クロマニヨンズの4人の目にどう映っているんだろう。きっとパワーになっているんだろうな。
  4曲目の『紙飛行機』に続いたのは爽快なロックンロールが印象的な新曲『グリセリン・クィーン』。「オー!オー!」とオーディエンスも声をあげ、拳を振りながら踊りまくる。その楽し気な様子に稲佐山にとんぼも飛んできていたゾ。大合唱となった『スピードとナイフ』、メンバーもオーディエンスも激しく頭を振り乱した『キラービー』で息つく暇も与えずにそのまま『歩くチブ』へ。音がデカさを増し、モッシュも激しさを増す。日頃のうっぷんを吹き飛ばすほどのパワー漲るライブはラストの『エイトビート』へ。ヒロトのハープがエモーショナルに響き、マーシーが尖ったギターを掻き鳴らす。音楽への愛がびっちり詰まったこの曲が稲佐山を一体にする。空へと昇る歌声の爽快感に浸ったところでライブが終わる。
「またねー」とマーシーが大きく手を振り、歓声はしばらく鳴りやまなかった。
 特に印象に残ったのはヒロトの言葉。彼らの登場の前にステージに上がっていた仲井戸に向けて「バンドはいいぞー!」と笑顔で言っていったことだ。ヒロト同様、バンドで仲井戸CHABO麗市がいつか再びSJに帰ってきてくれる日を楽しみにしたくなり、さらに音楽で繋がった2組の絆を感じる出来事だった。
SJだけのスペシャルな瞬間。心が震えた、そんな瞬間だった。
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the HIATUS

 ステージにはサウンドのチェックをするthe HIATUSのメンバーたちが。まだライブは始まらないけれど、早くもそのエモーショナルな音が響きだし、ステージの前にはオーディエンスが集まっていた。音を合わせているだけかと思っていたところに、そのままセッションを開始し、メンバーはアイコンタクトを取りながら音を、想いをひとつにしていく。 本番前に早くも温かな拍手に包まれながら、一度、ステージから降りた彼らは、自身のライブのスタートを待つ。そのあいだ、一度、気合入れの円陣を組んだけれど、MCから登場が告げるアナウンスに続いてSEが鳴りだすと、再び円陣を組んで気合を入れ直す。
  大きな拍手に迎えられ、ステージに登場したthe HIATUSの面々は、山肌を埋める観客の姿を見渡した。待っていましたとばかりの熱いテンションのオーディエンスの元へ届ける1曲目はアルバム『Trash We'd Love』の1曲目に収録される『Ghost In The Rain』。色彩感豊かなサウンドが稲佐山へと染み渡っていく。堀江博久のキーボードが切々と紡ぐ旋律の甘美な響きが伸びやかな細美武士のボーカルをより一層軽やかにするようだ。暮れ始め、夕闇の足音が聞こえだした稲佐山は夏の夕方ならではの色を湛えている。
  そこに2曲目の『Lone Train Running』が静かに染み出し、そのままアグレッシヴな歌へと音を上昇させていき、masasucksのギターが細美のギターと絡み合い、熱を帯びてオーディエンスを席捲する。なんてカラフルな音なんだろう。音に色なんてもちろんついていないのに、耳から侵入すると心を鮮やかに色づける音。アートとしての音楽を追求するが故なのか。ウエノコウジのベースと柏倉隆史のドラムがビートを撃ち込む『Centipede』でも。トクントクンと鳴る心音をドクドクと脈打つ音へと加速させてしまうほどの激しさを帯びた『Storm Racers』でも。the HIATUSの音はどこか視覚を刺激して聴く者の内部をカラフルに色付けるのだ。
  「今から4分間。みんなのどうしても許せない怒りを、ここで爆発させよう」と細美が言うや、赤くもあり、青くもある炎の熱を思わせる『The Flare』が響く。地響きを起こし揺れる稲佐山。マグマくらいに高温の熱を帯びた細美のボーカルが山肌を駆けていき、観客とthe HIATUSとが想いをぶつけ合う4分間が過ぎていく。直後、また色鮮やかな鍵盤の音が心を捕える『Silver Birch』、そしてストレートなメッセージが宿る『紺碧の夜に』と続いたthe HIATUSのライブは、最後の『Twidted Maple Trees』へ。ミディアムながら滾る熱を感じさせるこの曲が夕刻の闇に近づく稲佐山に染み渡っていく。the HIATUSの歌はそんな大自然の中にとても気持ちよく響いていった。
  ステージを降りた細美は「気持ちよかったー!」と声をあげた。見ている方もこれだけ気持ちのいいライブなのだから。やっぱりステージのメンバーも気持ちがいいものなんだなぁ〜と感じる。夕方の明るさもなかなか似合う、そんなthe HIATUSだった。

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