BIGMAMA

 想いを乗せ、感情を纏う音がステージから押し寄せるように溢れだす。全身で受け止めても零れてしまうほどの音の洪水は、耳から侵入すると血流に溶け、体中を廻っていく。そんな感覚に立ちつくしてしまいそうになるBIGMAMAのライブは『Paper-craft』からはじまった。
  衝動的で感情的な音に内部から煽動されてしまう、とでも言っているくらいに湧き上がるステージ前のモッシュは勢いを削がれることなく、ダイブの嵐を呼んでいく。Vo&Gtの金井政人の歌声が、まるでダイブを指揮するように観客を煽り、Gtの柿沼広也もBaの安井英人もステージ上でオーディエンスに負けじと暴れまくる。熱気が熱気を呼び込み、太陽の熱をも巻き込んで灼熱になる。ああ、なんて心が震えるんだろう。アッパーなロック・チューンに踊ってしまうのに、東出真緒のバイオリンの音色が琴線に触れて、ハートを揺さぶり、じんわりと痺れを覚えるよう。
  これこそがBIGMAMAのライブの醍醐味。体と心。その両方が“感情的”になるのだ。揺さぶられてしまうのだ。震えてしまうのだ。躍動と感動によって。ライブは続けて『CPX』へ。地面の砂が舞い上がり、無数の拳が高々と上げられる。金井のハイトーン・ボイスが熱気に満ちた砂塵を裂いて、会場中を席捲する。バイオリンの弓でオーディエンスを煽る東出のバイオリンと柿沼のギター、金井のギターが絡み合い、空へと昇っていく。
  「他のどんなフェスよりもこっちにいる僕らとそっちにいるみんなが一緒に(ライブを)作ってる感じがします」と金井が告げると、それに同意するように地面を揺らしながら大きな歓声が湧きあがる。満足気にほほ笑んだ金井は静かにギターを爪弾き、バイオリンがそっと音を添え『Neverland』が鳴り響くとモッシュにダイブに砂嵐に…と再び会場が暴れ出す。想いをぶつけ合うステージ前。さらに芝生の上になる後方にいる観客もみんな、高くジャンプして彼らの歌に応えている。どこで見ていようと関係ない。強い音は強く心を、体を揺さぶるものだ。そんなことを思った。続くは今年、日本で46年ぶりに見られた皆既日食をテーマに描かれたドラマティックで壮大でアグレッシヴな『ダイヤモンドリング』。リアド偉武の叩きだすドラムのビートが太陽の鼓動を伝えるようなこの1曲ではクラップが湧き、会場にいた小さな子供も思わず踊り出す。そしてラストは『the cookie crumbles』。疾走ビートで会場の熱を加速させた彼らは、心と体に熱い震動の余韻を残してステージを降りていった。
  演奏を終えた金井は言う。「主催のFM長崎のみなさんと、そしてお客さんと一緒にフェスを作りあげていく感覚はほかのフェスにはない感覚でした。すごく色々と教えられたフェスだなと思います。この長崎とこの先もずっと関わっていければいいなと思いました」と。ただ機械的に参加するのではない。共に作るフェス・Sky Jamboreeにまた一組のアーティストが魅了されたのだった。

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ストレイテナー

 出番のためにステージ袖にやってきたストレイテナーの4人。そこにはTHE BACK HORNの山田将司とBEAT CRUSADERSのヒダカトオルも付いてきて、6人で談笑をしている。しかし、談笑しながらもだんだんと気合が滲んでいくのか。出番が近づくと表情が変わってきた。それもそのはず。ここはホリエアツシとナカヤマシンペイの故郷である長崎。
  いよいよその長崎の、Sky Jamboreeのステージに立つとあって、会場は“地元出身アーティスト”であるストレイテナーの登場を今か、今かと待ち望み、期待の熱はぐんぐんと膨れ上がっていたのだから。彼らの出現を告げるSEが流れると、堰を切ったようにステージの前へと観客がなだれ込み、メンバー4人が自身の位置に着くと大歓声が稲佐山をいっぱいにする。その声にホリエが笑みを見せた。そして響きだしたのは『Melodic Storm』。カラフルに発色するイントロで早くも会場が揺れる。キラキラとプリズムが回転して光を反射させるように絡み合うホリエと大山純のギターリフに躍動感に満ちた日向秀和のベースが重なり、会場の熱をあげていく。
  2曲目は8月にリリースしたばかりの『DONKEY BOOGIE DODO』が披露される。ブギのリズムにいつしかクラップが湧き、体を揺らしながら楽しそうにビートに酔うオーディエンスの姿は会場の前方、後方関係なく見られる。ストレイテナーだからこそ出来る振り幅。ロックンロールのみならずエモーショナルにスウィングするナンバーだって、ロックのフェスを見事熱くさせることが出来るのだ、と感じる場面だった。
  続いてタイトル通りライブのマストチューン『KILLER TUNE [Natural Born Killer Tune Mix] 』。ステージ上の4人が頭を振り乱すとオーディエンスも凄まじい勢いで砂を舞いあげるほどの盛り上がりで応える。ナカヤマのドラムがドンドンとひとつ音を打つたびに突風のような圧が観客を圧倒していく。感覚が奪われる。彼らの音と自分しか存在していない。そんな錯覚に陥るほどのパワー。さらに疾風のナンバー『TRAIN』では大合唱が起こり、メロディと共に観客の熱も空へ向かって放たれていくのを感じたところで、ホリエが口を開く。「5年前に長崎の風景や仲間たちを想って作った『EVERGREEN』をやります」。温かな拍手が沸き、クラップが鳴る中、ホリエの伸びやかな歌声が稲佐山へと広がっていく。長崎の景色。稲佐山から見下ろす街の色。歌が溶け込んでいく。長崎への想いを稲佐山に刻みつけ、4人揃ってステージの前まで出てきて地元のお客さんへ、長崎へと集まった人たちへと感謝の想いを込めて大きく手を振る彼らの姿に胸が熱くなった。
  「the HIATUSやBEAT CRUSADERSが長崎に来てくれたっていうのがすごく嬉しいなって思った」とライブ後に話してくれたホリエ。地元でみんなでライブが出来ることが嬉しいのだそう。観客たちと共に最後までSJを楽しみ、長崎での時間を堪能している姿が印象的だった。

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